感想・レビュー, 本の感想

【本の感想】恩田陸さんの演劇的小説おすすめ3選

大大大好きな作家のひとり=恩田陸さんの小説を紹介します。

恩田陸さんといえば『蜜蜂と遠雷』で、第156回直木賞・第14回本屋大賞をダブル受賞しました。
『夜のピクニック』でも、第26回吉川英治文学新人賞・第2回本屋大賞をダブル受賞している実力派です。

『蜜蜂と遠雷』では、小説では表現が難しい「音楽」を表現して、読者にイメージを広げてくれました。
「演劇」も、小説では表現は難しいです。
恩田陸さんは、小説の表現の幅を広げている作家です。

ここでは、恩田陸さんの演劇を描いた小説3冊を紹介します。

事件と謎解きとオーディションと劇が同時進行……『中庭の出来事』
山本周五郎賞受賞作


小説で演劇を表現するのは難しいです。
演劇の臨場感・リアル感・迫力・生身の人間の情熱・目の前で繰り広げられるフィクションの世界、を、小説で表現して読者にイメージしてもらえるかどうか難しいからです。

この『中庭の出来事』では、複数の状態を同時進行させることで、イメージできます。

現在進行中の事実・事件と謎、解説に思える男2人、オーディションの劇中劇。

騙されちゃいけません。
女優というのは、舞台の上で演じるときだけ女優になるのではないのです。
女優は、24時間女優です。
特に、女優と女優の邂逅なんて、だまし討ちみたいなものでしょう。
本音を見え隠れさせて、相手の本音を探るんですから。


オーディションの劇中劇は、戯曲の形をとってます。
これは、小説のための戯曲です。
実際に舞台でこのセリフ通りに演じられたら、説明セリフっぽく聞えてしまいます。


始めは、演劇的小説と思って読み始めたのが、ミステリーかと思い、ホラーになり、ヒューマンドラマかと思ったら、最後はこれですよ。
恩田陸ワールドで、迷子です。

オーディションがいちばん面白い……『チョコレートコスモス』

恩田陸さんは、演劇の中で、オーディションがいちばん面白いといってます。
なので、演劇のオーディションの小説が書きたくて、劇団をがっちり取材して、この小説を書きました。
と、文庫版のあとがきにありました。

オーディションで、役者の実力が見えてしまいます。
実際の舞台以上に、実力の差がはっきり表れてしまうんですね。
だからこそ、面白いのです。

中野谷つばめは、「いちばん面白い小説・いちばん好きな小説」として、
『チョコレートコスモス』を挙げてます。
不動です。

役者の「役を演じる自分」と「演じることを考えている自分」の両方をみることができるからです。
役を離れたときの役者は、芝居に対して何を考えているか、舞台裏が見えるからです。

主人公・佐々木飛鳥は、演劇を始めたばかりの大学生です。
オーディションで相手役を務める東響子は、父も母も実力のある演技派の芸能人です。サラブレッドです。
この2人を取り巻く環境は、物語が進むと、変わっていくのかどうか。

あとがきによると、続編の『ダンデライオン』という小説があるらしいのですが、2020年2月現在、確認できておりません。
佐々木飛鳥のその後の演劇人生、気になります。

小ネタ満載の舞台用脚本……『猫と針』

『中庭の出来事』では、小説的戯曲を書いた恩田陸さんは、『猫と針』で、上演を目的とする舞台用脚本を書きました。
2007年8月9月、実際に「演劇集団キャラメルボックス」で上演されています。
『猫と針』は、小説的演劇脚本です。

登場人物は、同級生の男性3人と女性2人の合計5人のみです。
舞台上に5人全員が揃うのはわずかな時間で、ほぼ誰かがいなくなります。
と、人はその場にいない人を話題にします。

演劇の舞台用脚本でありながら、小説的という言葉が出てくるのは、やっぱり恩田陸さんは小説家だからです。

短いセリフでやりとりしているうちに、それぞれの独白の長いセリフが出てきたり、1ページ半以上の長いセリフが書かれてありました。
セリフが長いと、説明的で、小説みたいです。
セリフなんだけど、小説の地の文みたいで、恩田陸調だと思いました。


「小ネタ」というのは、誰もが知っている映画や小説が出てくるところです。
それから、おにぎりの具は何が好きか、ドリンクは何か好きか、登場人物たちの現状がわかるところです。


演劇集団キャラメルボックスで上演された『猫と針』の舞台を観たかったです。
DVDも探してますが、みあたりません。
演劇集団キャラメルボックスは、2019年に活動休止しています。
舞台というのは、一期一会なのですねえ。

まとめ

恩田陸・著
『中庭の出来事』
『チョコレートコスモス』
『猫と針』
以上、文庫にリンクしてます。

「演劇的」とは、臨場感だと思っています。
それだけでなく、「刹那」とか「一期一会」といった言葉をイメージしました。
小説は何度も読み返せるけど、演劇の舞台の、生で観たという事実は、1回だけ。

その1回を、小説を読んだらまた思い出させてくれます。